スマート漁協とは、主に小型船舶による沿岸漁業や養殖業で、IoT技術を活用して漁場や養殖場のデータを取得し活用することで、効率化を図る新しい漁業スタイルのことです。
例えば、沿岸漁業において、多くの魚がとれる漁場を探す場合には、漁師の経験と勘に頼っています。しかし、IoT技術によって海流や風向き、水温などのデータを収集し、分析し、魚の行動を予測することで、良好な漁場を見つけることができます。
また、養殖場においても同様に、気象の変化などさまざまな条件によって予期せぬ不作が発生することがあります。しかし、養殖場の海水の塩分濃度や水温、比重などデータを収集し分析をすることで、与える餌の量を変えるなど常に環境の最適化ができれば、不作を防ぐことが可能になります。
さらに、スマート漁業では、IoT技術に加え、AI技術も重要な役割を担うと考えられます。IoTデバイスで収集した、海洋のビックデータをAIで解析をすれば、従来、漁師の経験や勘に頼っていた、良好な漁場を見つける作業をシステム化することで、これまでの漁業とは異なった新しい産業に変えることができます。
従来、漁業や水産養殖業の漁獲量は、地元の漁師が長年培ってきたノウハウや経験、勘を活かすことで伸ばしています。
しかし、地震や大災害により海の状況が変わることで、今までとれていた魚がとれなくなったり、逆に取れなかった魚がとれるようになったりなどの現象が起こっています。一方では、原因がわからない不作の翌年には数十年に一度の良作になることがあります。
これは、漁師が培ってきたノウハウや経験、勘だけでは海の状況がわからないことがあるからです。海の変化の原因を探るのに、漁師の日誌などの主観的なデータから海の状況を分析することが非常に難しいことです。
養殖魚の出荷数は世界的に伸びてきています。しかし、国内においての養殖魚の出荷数は伸び悩んでいます。この要因としては、日本は島国であり、四方が海に囲まれていることで、魚は「養殖」するのではなく「獲る」漁業が盛んだった歴史があるからです。また、魚を養殖する技術は決して簡単なことではないということもあります。
そこで、漁業や養殖業では、漁場のデータを取得することで漁場の環境を把握し「漁に活かす」「養殖場の栄養状況などを知ることで病気への対策データを作積する」といったことに、IoT技術を活用するニーズが広がりはじめています。
近年では、水産養殖業でIoT技術を活用した海の状況をデータ化し、効率的な漁獲に活かすことが求められています。
KDDI研究所とゲイトは、スマート漁業に向けて三重県尾鷲市須賀利町のゲイト漁場(定置網)で、スマートブイによる水温データ測定やカメラブイによる水中撮影などの実験を行っています。
今後は、実証実験を通して、漁獲量予測による漁業の効率化を図るとともに、スマートブイに搭載された加速度センサーを利用した、波高推定実験など、漁業作業の安全性向上を図るための検討や検証を進めています。
従来は、人がその都度行っていた、養殖魚への適切な餌の量にとって重要な条件の、水温、溶存酸素濃度、塩分濃度の測定作業を、設置した計測ブイで自動計測を行っています。それらの計測したデータを、携帯電話通信を使ってネット上のクラウドサーバに蓄積することで、誰でもタブレットなどで数値を確認することができます。
日々の養殖操業日誌をタブレットに入力するデジタル操業日誌と海のアメダスの計測値を使って、日々の餌の量などを決めています。
このことで、従来は人の勘に頼っていた、養殖魚への餌の量が、科学的に魚体によってもっとも適切な形と量を与えることができ、無駄な労力を使うことがなくなって、養殖が大きく効率化します。
IoTを使った養殖効率化と連携させ「ドローン船」によって給餌そのものを完全自動化する研究開発もロボット工業会で進められています。