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電力×IoT

更新日:2022/01/26
発電所イメージ
電力×IoT
  1. インフラ監視での活用
  2. 事後対応ではなく故障予知ができる期待も

電力業界のIoT活用の流れ

IoTは製造からサービスや暮らしに関係する幅広い業界で活用されています。電力業界でも、IoTを活用した事例は確認されています。

電力のインフラ監視にIoTの利用が始まる

電力設備の保守や保全に、IoTを活用して、発電機の軸受監視では、部材温度や回転速度など観測点を充実させたり、各設備から取得したデータを活用し、点検箇所や点検範囲の最適化など、設備の不具合の早期発見や寿命判定など、予兆や保全に活用されています。

それ以外に、送電線など流通設備では、油入地中ケーブルに対し、接続点で劣化時に発生する部分放電の監視、油中にガスの分析、変電所の変圧器の油面や油温など観測点の監視など、さまざまな設備でIoTを活用しています。

今後は、IoTや人工知能(AI)なども活用して、機器や電線などの実績データと、点検や故障など記録データと組み合わせ、全ての設備の保全業務の最適化を目指しています。

電力業界もLPWAに注目

電力業界では、現在、一般家庭(低圧の需要家)からスマートメーターの導入が進められています。このスマートメーターからのデータは、現在、無線LANや携帯電話方式など使用してデータの送信をおこなっています。これらのデータの送信方式を「省電力無線通信(LPWA)」に変更する動きがあります。これについても、今後、情報通信網に「あらゆるモノ」を繋がることを見据えています。

また、将来的には、電気メーターだけでなく、ガスメーターなどもLPWAを採用し、総合的な設備監視サービスの展開を目指しています。

需給調整にもIoTの活用が進む

現在、太陽光発電や風力発電などの増加に伴い、需給変動や周波数変動、電圧上昇など、電力系統における、さまざまな問題が潜在化しています。そのため、一般の気象情報に加え、各地域に独自に配備されたセンサーから気象情報を取得し、変動制のある再生可能エネルギーの発電予測を行う電力需給調整にもIoT技術の活用の場を進めています。

また、広範囲に分散している再生可能エネルギーや蓄電池、一般家庭からのエネルギーリソースを集約し、電力需給バランスの調整に活用する仮想発電所の構築や、一般家庭の電力の消費量が多い時間帯に合わせ、商業施設や公共施設などへ、人を誘導することで、家庭での節電を促進する「デマンドレスポンス」など、今後は、あらゆるモノと繋がることで、便利性や効果の高いサービスなどにもIoT活用を進めています。

新サービスでもIoTがカギを握る

次に、電力業界のIoTを活用した新サービスで、代表的なものは、電柱や地上設置設備を活用して、広告や公共情報などを表示する「デジタルサイネージサービス」が考えられます。また、スマートメーターを活用して、広範囲に分布する電柱上に専用の通信装置を設置することで、高齢者や地域防犯、見守りなどにもIoTは活用できます。

さらに、分電盤の幹線から電流を測定し、宅内で使用している機器を特定する「ディスアグリゲーション技術」などもIoT活用の事例の一つです。そのほか、日本ではあまり知られていませんが、「分散型台帳技術(ブロックチェーン)」を活用して、太陽光発電など余剰電力を売却する電力取引など、IoTを活用することで、利便性や効果がより一層高まることが考えられます。

電力業界でIoTを取り入れるメリット

電力業界では、IoTを活用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。IoTを活用することで、「情報の取得」や「見える化」、「管理(監視)、「予測」、「制御(実行)」を上げることができます。

現在では、多くの人はIoTを単なるデジタル化ととらえています。しかし、本来IoTとは、数多くのあらゆるモノがインターネット網につながることで、さまざまな情報のやり取りや制御ができるという最大のメリットがあります。また、取得した情報を分析することで、新しいサービスなどを想像することにも活用できるメリットもあります。

これらのメリットを活かすことで、現在では、保守や保全、設備管理などの精度向上や効率化などに留まっているIoTの活用を広範囲に広げていくことや、電力事業や付帯するあらゆる事業まで、IoTを導入してお互いに情報を連携することができれば、その情報量は巨大なデーターベースとなりえます。

この巨大なデーターベースを活用することで、現在、日本が目指している「超スマート社会(Society5.0)」の実現に向け、各分野で様々な取り組みが進められている中で、電力業界でもエネルギー事業の枠に留まらず、IoTを活用し、あらゆるデマンドサイトとの連携により新しいサービスの展開やオープンデータ化の旗振り役となれば、日本の目指している超スマート社会を先導できるかもしれません。

実際に、発電所にIoTを取り入れた事例は以下でご紹介しています。

【電力】IIoT事例を見る

たとえばどんなソリューションがあるのか

現在、太陽光発電の導入が増えるにつれ系統に対する昼間の需要は減少しています。しかし、一方では、夕方のピーク需要の上昇とのギャップが拡大する傾向になっています。

特に、太陽光発電ピーク時は、電力会社からの供給される電力の一部が過剰になり、余剰電力が発生し系統の不安定化を引き起こす原因にもなっています。さらに、従来は、負荷変動を追尾し、出力変動加速が比較的大きなLNG、石油、揚水発電などが需要のバランスを維持してきましたが、太陽光発電の普及が進むことで、需要とのバランスが崩れ、調整力を発揮していた、発電機を停止させなくてはいけない状態が発生してきます。

そこで、先進のIoT技術の導入によって、電力系統バーチャル化による送配電事業者向けIoTソリューションがあります。送配電事業向けIoTソリューションとは、IoT技術の導入により、現場機器の情報を取り込み、IoTアーキテクチャ上で電力系統のバーチャル化を実現するソリューションです。

そのほか、電力事業者と需要家を仲介して、多数の需要家をまとめ、消滅した電力の需要量を束ねて取引を行うネガワットアグリゲータなどのサービスを生みだすことができるようになります。これら以外にも、バーチャルパワープラントの構築により、多種多様な施設や設備に対し効果的な制御と運用を行うことも可能になります。

参照元:【IoT×業界分析 Series】電力業界のIoT化とエネルギー消費(https://eneken.ieej.or.jp/data/7830.pdf

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