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【自動車】IIoT事例

更新日:2023/01/12
自動車工場イメージ

トヨタ自動車のIIoTへの取り組み

アンドンシステムの再構築

世界のTOYOTAが最初に対象にしたのは生産状況を把握できるアンドンシステムの再構築をすることだった。

「アンドンシステム」とは、設備の稼働状況や作業指示が一目で判る現場改善の気づきツールであるが、システムそのものは、3色の電灯が灯るタイプから液晶モニター表示に変わったものも、機能としては変化がなく、表示結果を見てから人が動く、といったシステムで「現場に着いてから、異常処理に必要なツールが足りないので、取に戻る、といったことも少なくはなかった。

現場では、モニターに表示された情報を増やすなどの提案もあったが、情報量を増やすと見にくくなるという意見もあり、問題解決はできていなかった。

また、1ラインに1から2個の総合アンドンと、ラインの詳細を工程ごとに表示する「サブアンドン」が存在し、近くのサブアンドンで止まった場所を調べ、遠くのアンドン総合アンドンで異常処置をどうするか、決める必要があったほか、1ラインあたり、150から200台のPLCやロボットが800台ほど稼働している。

しかし、いつ、どこで、なにが止まったか、といった状態を把握しているPLCのすべてのデータを収集できないといった課題もあり、これらの課題を、解決する狙いで、IIoTを活用したシステム導入を考えたという。

これらの問題を解決するために、SCADA(スキャダ)の採用が検討された、さまざまなメーカーのSCADAのベンチマークの測定をおこない、総合アンドンとサブアンドンに分かれていた、オペレーションに無駄があったため、タブレットとスマートフォンでどこにいても、すべてのデータが把握できるシステムを目指すには、Web化とPLCメーカーへの依存を減らし、柔軟な対応ができることを条件に、国内外のSCADAメーカーのベンチマークを実施し、総合的に評価した結果、リンクスの「zenon」を採用。

結果、各センサーやロボットのデータは、過去のデータを含め全てネットワークを返し「zenon」に蓄積され、見える化を実現でき、蓄積されたデータをもとに解析を行えることで、新しい知見を見つけることができるようになった。

稼働と今後

同社の堤工場で稼働したが、更なる機能を目指し、「スマートウォッチに工程からのメッセージを送れないかと考え、フリーアプリとzenonを連携させ、簡単なメッセージを送る機能の開発を進めている。

また、従来型のPLCだと保全などの面から、現場とのやり取りをする手間が発生してしまうなどの課題にたいし、ソフトPLCのCODESYSの採用を決定した。PLCは、ビット情報からいろいろな計算ができることから、あえて残すことにした。

ただし、ソフトPLCにしたことで、将来的にロボットのコントロールにも搭載していきたいという。

ソフトPLCをロボットに搭載することで、ロボットを動かす用途によって、微妙に変わる信号が、設備からロボットに渡ってしまい、結果、ロボットメーカーに渡す信号も変わることで、その都度、設計を行うことになるが、CPDESYSを活用することで、少なくすることができるのではないかと期待をしている。

トヨタ自動車が2020年に発表した新型ヤリス向けに、トヨタ北海道、北海道苫小牧市の第二工場内に、エンジンとモータからの動力を車輪や発電機に伝えるハイブリットカーの心臓部といえる「ハイブリッド・トランスアクスル」の生産に、新しくIoTを導入した新生産ラインを整備し、従業員200人を配置し、月産1万台態勢でハイブリッド・トランスアクスルを生産しています。

「ハイブリッド・トランスアクスル」の生産ラインを構成する約400台の製造設備のうち、照明やコンプレッサーなど一部を除く約370台にIoT機器が導入されています。自動制御に使いPLCやコンピューター数値制御などの各装置に稼働状況を示す複数のセンサーが装着され、4Gの通信モジュールを内蔵したパソコンで測定値を、インターネットを介しプライベートクラウドに、データを格納し分析しています。

これにより、リアルタイムにダッシュボードから設備の稼働状況のデータを確認ができ、意思決定のスピードの向上につながりました。

また、配電盤から分岐する設備、ライン単位での電力使用量の把握も可能になっています。また、リモートアクセスにより、オフィス内や他の工場など遠隔から、産業用パソコンの再起動やデータ送受信制御など実装できます。

今後は、抜き取り検査結果と設備の稼働情報の照合、IoTネットワークのセキュリティ環境の最適化、設備機器など予兆管理、ローカル5Gの活用などに取り組む予定だと言います。

BMWのIIoTへの取り組み

車のドアは組立作業をしやすくするために、一度車体から取り外され、車種ごとに保管されています。ドアが必要になると、組付け場所に搬送された車体に組付けられるのです。

BMWでは「ディンゴルフィング工場」のドア組み立て工程においてzenonを採用。すべてのドアにモデルや車台番号、ドアの位置などのラベルを貼りつけ、搬送に使用する製品にはID情報を埋め込んだ「RFIDタグ」をつけています。BMWでは、zenonを取り入れてどのように変化したのでしょう。

zenonを取り入れて変化したこと

BMWでは、どのタイミングで、どのドアを搬送すればよいのかが重要なテーマとなっていました。zenonが取り込んだ情報で、コンベヤや保管場所にどのくらい空きがあるのか、どのモデルのどのドアが必要なのか、組付けのタイミングなど、ドアの搬送や保管、組付けの工程にかかる情報を取得することが可能になったのです。

例えば、zenonのワイドビュー機能を使用すると、画面内で被写体を少しずつ大きくしたり、または小さくしたりしながら、細かいところから全体までのあらゆる情報が取得することができます。エンジニアは工程全体の状況を見ながら、車体やドアがどこにあるのかが、どこに問題があるのかなど、すぐに分かるようになり負担が軽減されたのです。

アウディのIIoTへの取り組み

アウディにはドイツやベルギー、ハンガリーなどさまざまな国に工場を展開していますが、さまざまな工程において幅広くzenonが採用されています。本社のあるインゴルシュタット工場では、塗装の工程においてzenonを採用することによって総合的な可視化・分析ツールとして活用。ここでは、導入に至った経緯やどのように活用されているのかといった点についてご紹介していきます。

zenonを取り入れて変化したこと

インゴルシュタット工場でzenonの導入検討が行われたのは、生産の信頼性を高めるという目的で、制御システムのアップデートを行う必要があったことがきっかけです。中でも、コーティング工程でのデータ分析・収集に加え、生産ライン可視化画面の使いやすさの向上が求められていました。そこで複数製品を評価した結果、300以上のPLCドライバを兼ね備えている点が評価されzenonが導入されています。

現在、zenonは9台のPLCと数千のデータのやり取りを行い、塗装工程をカバー。各メーカー設備の上位にzenonを置くことでそれぞれの設備からのデータ取集が一元的に行える点に加え、そのデータを帳票作成にも活用。コントロールルームにあるzenonから一括して設備への指示を行えるようになった点に加え、操作記録やイベント履歴はタイムスタンプ付きで自動的にzenonに保存されるので、いつでも参照できるようになっています。

現在ではさらなる機能拡張により、メンテナンス作業のスケジューリングを実施。このことにより、生産現場の停止時間削減などに繋げています。

フォルクスワーゲンのIIoTへの取り組み

フォルクスワーゲンでは、ボデー、塗装、組立、エンジンなどの工程にzenonを導入。ドイツ・エムデン市にあるエムデン工場にも導入されています。エムデン工場では、組立工程全体の統合監視や制御に活用。ワールドビュー機能で稼働状況、各セル内の個別装置の稼働状況などを確認しています。直感的な操作で素早く画面表示できる機能です。個別装置の画面では、設定値の変更やセンサの有効化・無効化の切り替えも可能。異常発生時にはアラーム情報を取得できます。

zenonを取り入れて変化したこと

フォルクスワーゲン標準の製造情報管理システムとzenonを連携できることがポイントでした。製造情報管理システムから生産する車種の情報を取得して、現場作業員用の画面に表示が可能。「次にどの車種がコンベアで流れてくるか」「どのような作業が必要か」などを各作業員が把握できます。作業員が積極的に動けるようになったことで、業務の効率が大幅にアップしています。

スクラッチ開発が必須だった製造情報管理システムとの接続も、zenonなら標準機能として用意。個別の機能開発が不要になりました。開発工数とコストの大幅削減が実現しています。

アラーム管理機能では、異常が発生した際に即座に必要な情報を取得・処置可能に。装置のダウンタイムも削減されました。

本田技術研究所のIIoTへの取り組み

本田技術研究所では、HALCONを用いた接触防止支援システムの構築を行っています。同社では、HALCONの基本開発環境を用いることにより障害物検知アルゴリズムを開発し、障害物情報を検知した後CAN(Control Area Network)を用いてシャーシ制御デバイスへ送信するための機能を拡張開発環境で実現しています。

HALCONの「Cインターフェース」という機能は、C言語を用いてユーザ独自の関数をHALCONに追加し、統合開発環境の構築が可能。さらに、ユーザ独自の関数とHALCONの関数間での画像情報などの受け渡しについても、容易にプログラムが可能となります。本事例でも、Cインターフェースを用いることによりCAN通信の関数が開発されました。

HALCONを取り入れて変化したこと

HALCONは強力な開発インターフェース機能を有していますが、その中のひとつに中間処理画像を随時確認できる機能(Variable Watch)があります。本田技術研究所では、画像処理アルゴリズムの基本使用検討・作成のために簡単なGUIを作成することが検討されました。そこでHALCONの機能を活用することによって、処理の追加や変更、削除の結果を確認しながら開発を進めることが可能に。画像処理アルゴリズムの妥当性を随時検証できるようになったことが開発工数の削減につながっています。

このHALCONの専用インターフェースは、入力コマンドができるだけ少なくなるように体系化されている点が特徴となっていますが、この点も開発効率の向上につながったと考えられています。また上記の他にも、実装段階、また実車テスト段階においてもHALCONの導入が有効であったことが確認されています。

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