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【農業】IIoT事例

更新日:2022/11/17
農業イメージ

栽培データを地域で共有できる

IoTサービスを展開している株式会社Momoは、地方自治体や公社、企業などと協力を進めてきた、栽培データを地域で共有して地域単位での生産性向上を目指す農業IoT「Agri Palette With(アグリパレット ウィズ)」の提供を行っています。

「Agri Palette With(アグリパレット ウィズ)」は、土壌(土壌水分量・土壌温度・土壌EC・土壌Ph)と空気(気温・湿度・二酸化炭素濃度)と日照量のデータをセンサーで取得し、受信機を通してデーターベースに保存を行い、専用のアプリによって可視化ができるシステムです。「Agri Palette With」を設置することで、熟練農家の平均データから大きく外れた際に、メールが送信されます。
このことで、特に新規に参入する農業従事者の壁を下げることができます。また協働選果や地域ブランド品種の生産量の質の向上を図ることもできます。

農業用のセンサーのデータは新規参入の農業従事者や、はじめての導入時には活用が難しく、熟練者にとっては導入の意欲が高くないという難点があります。しかし、集団単位でデータの活用に取り組むことで、導入直後からデータの価値を活かせる点でも特徴があります。

京都府と高知県の
スマート農業事業にも採用

京都府舞鶴市のスマート農業事業では、地域の名産品である「万願寺甘とう」を対象に、土壌ECや温度、水分、土壌Ph、CO2、日照量、温湿度など、栽培データの共有化と業務改善が実施されています。

高知県安芸郡北川村のスマート農業事業では、ゆずの幼木や苗木を対象に、栽培データの共有・業務改善ほか鳥獣の出現情報等のデータの共有および業務改善を実施されています。

「Agri Palette With(アグリパレット ウィズ)」は、農業人口の減少や、高齢化、後継者不足など農業が抱えている、問題の解決方法の一つとして期待されています。

オランダの事例

オランダのスマート農業は、世界におけるスマート農業を語る上で欠かすことができない事例です。オランダの国土面積は、約4万1,000平方kmと日本の九州とほぼ同じ広さです。農地面積でみると、約184万ヘクタールと日本の450万ヘクタールに比べても規模は小さく、さらにやせた土地も多く、冬の日照時間が少ないなど地理的な要素も絡んで、決して農業に適した環境ではありません。

しかし、2013年の国連食糧農業機関(FAO)の統計によれば、アメリカに次いで、世界第2位を誇っています。その起爆剤になったものが、最新のICT技術を活用したスマート農業です。

オランダが従来の農業からスマート農業へ変革をしたきっかけは、1980年代に、当時の欧州諸共同体(EC)(現・欧州連合(EU))が貿易の自由化を進めたことで、EC加盟国のスペインやポルトガルなどから安価な農作物が大量に輸入されました。この影響で、オランダ国内の農業が苦戦を強いられることになったことからはじまります。

オランダ国内では、約8割の一般農家で自動制御システムを搭載したコンピューターで農作物に与える肥料や給水などの制御を行っています。また、同国北部では、温度や湿度、二酸化炭素などをセンサーによって管理する「アグリボートA7」と呼ばれる巨大なビニールハウスがあります。

このハウスでは、徹底した環境保持、センサーで吸い上げたデータが別の場所にあるオフィスへ送られ、24時間体制でさくもとにとって適切な環境を保持します。このことで、天候に関係なく通年で作物を育てることができます。そのほか害虫や病気とは無縁であり、農薬を使うことはなくなっています。

また、ワーヘニンゲン大学・ワーヘニンゲン食品化学センターを設立して産学官連携で最先端技術の研究開発を進めるなど、国を上げた農業革命プロジェクトが身を結び、今では、オランダは農業大国となっています。

手軽に電源確保ができる

株式会社インターネットイニシアティブが提供している、水田の水位と水温を測定するIoTセンサーや、複数のセンサーからデータを収集してクラウドに送信するための無線基地局、測定値を遠隔からスマートフォンで確認する専用アプリをセットした「水管理パックS」を提供しています。

しかし、無線基地局Kiwi Technology製「TLG3901BLV2」は、屋内に設置することを想定していたことや、IoTセンサーを設置している圃場までの距離が遠い場合や、基地局と圃場との間に建物など遮蔽物がある場合には、データ通信が不安定になのことがあり、無線基地局を圃場脇や空き地など屋外に設置するには、電源の確保が必要であった。

そこで、株式会社インターネットイニシアティブと株式会社カウスメディアは、IoT向けの無線通信方式であるLoRaWANに対応した無線基地局を屋外での利用に対応しています。これにより太陽光受電ができるよう、ソーラーパネルや充電バッテリーなどをセットした「LoRaWANソーラー基地局DIYパッケージ」を共同で開発しています。

また、今後、河川監視や屋外インフラ設備監視など農業以外にも利用できると期待されています。

環境負荷を可視化する

西菱電機株式会社が提供している「気象観測IoTパッケージ」は、センサーを設置した特定エリアの気象を、遠隔で監視できます。1つのセンサーで2種類のデータを収集し、クラウドで蓄積することで、パソコンがあればどこでも、温度、湿度、雨量、風向、風速、湿度、紫外線の数値を確認できます。
また、事前に閾値を設定しておけば、閾値が設定している数値を超えるとメールで通知するなどのニーズにも対応しています。

IoT機器で農村地域の
情報通信環境整備を支援

「農業農村情報通信環境整備推進体制準備会」は、IoTやICTを活用したスマート農業の普及に必要な情報通信環境を整備して、農業が抱えている「農業人口の減少や高齢化、後継者不足」の解決に向けたサポート支援を推進しています。

そこで、ベイシス株式会社が事業を通じて培ってきた、IoT機器設置の技術を活かし、スマート農業の社会実装に必要な情報通信環境を整備し、各種センサーを使用し効率的な、農業生産を普及させることで、農業が抱えている「農業人口の減少や高齢化、後継者不足」の解決に向けた起爆剤として期待されています。

農業大国アメリカでは
広い農地をドローンで掌握

世界一の農業大国のアメリカで進められているスマート農業は、「AgTech」(アグテック)と呼ばれています。これは、Agriculture(農業)とTechnology(科学技術)とを組み合わせた造語です。

AgTechを代表的な事例としては、ドローンを利用し適切な範囲に適切な農薬の散布行っています。そのほか、上空から農作物の生育状況や土壌の状態など、さまざまなデータを収集し、農地の状況分析に使われています。広大なアメリカの農地ならではのテクノロジーです。

さらに、センサー技術の向上により、害虫や病気の自動検出も可能になってきています。また、可視光や遠赤外線で反射する光の波長を検知し、作物の生育や栄養状態、土壌の水分状況などの分析も行っています。

そのほか、衛星画像から収集した土壌や農作物の状態を、蓄積されているデータと照合し分析を行うことで、土壌の状態に合わせた適切な作付け量や肥料の分析を、農家へアドバイスするサービスなどもあります。現在では、アメリカの農家の約3分の1が活用しているほど人気があるサービスです。

また、都市部のビル内部に植物工場を建設することで、輸送コストの削減を図ったり、自動運転トラクターや画像認識技術を使って、作物の間引きを行うロボットなどを導入している農家も既に存在しています。

参照元:SMART AGRI(スマートアグリ)(https://smartagri-jp.com/news/2218)、(https://smartagri-jp.com/smartagri/34)、(https://smartagri-jp.com/news/1523)、(https://smartagri-jp.com/news/1006

株式会社ケツト科学研究所の
IIOTへの取り組み

生産者が政府に米を売却する場合には、「農産物検査法」に基づく検査が義務付けられています。この検査には、品位などの項目の検査などがありますが、これまでは目視検査員が担当していました。しかし、近年の労働力不足による採用コストや教育コストの問題などから、この検査を自動化することに対してニーズが高まっているという現状があります。

以上のことから、株式会社ケツト科学研究所では画像処理エンジン「HALCON」を穀粒判定機「RN-700」を導入しています。

HALCONを取り入れて変化したこと

画像処理エンジン「HALCON」を搭載した穀粒判定機を導入して検査を行うことによって、株式会社ケツト科学では検査の高速化・検査コストの削減に加えて、検査結果の定量化を実現しています。

検査の自動化にあたっては、「検査員が数秒から十数秒で完了できる検査が、機械の場合は1分程度必要」「米粒一粒ごとについての細かい判定や評価が行えない」といった問題がありました。こういった問題について、同社が導入した「RN-700」では、HALCONの特徴でもある高速・揚力な領域分割や特徴量検出といった機能の利用を活用することで解決しました。結果として、1000粒程度の米粒を早い場合には16秒で検査可能、さらに高い領域分割機能を用いることによて、米の一粒一粒に対する判定を可能にしています。

さらに、HALCONの高いスケーラビリティを活かし、ARM CPU+Linux OS環境下での画像処理を行い筐体の小型化・安定化を実現しました。

このシステムでは、「農業食料工学会」にて開発賞を、また「食品産業新聞社」より食品産業技術功労賞を受賞しました。

参照元:LINX 製品紹介サイト(https://linx.jp/casestudy/halcon_rice_inspection/)

BBull社のIIOTへの取り組み

BBull社はドイツの飲料品産業企業です。同社では、1時間あたり数万もの容器を検査するシステムとして、高速マシンビジョンシステム「STRATEC BV 3000W」を提供しています。このシステムでは、容器の前面・背面・ボトルネック部分のラベルに対して検査を行いますが、検査の中では「ラベルの適合性」「賞味期限の認識」「容器全体の外観検査」など多数の項目に対してチェックを行う必要があります。

この検査には非常に高い精度が求められますが、BBull社のエンジニアはマシンビジョンソフトウェアライブラリHALCONを採用しました。採用にあたっては、HALCONが自動オペレータ並列化処理(AOP)をサポートしている点が決め手となったとのことです。

HALCONを取り入れて変化したこと

膨大な数の検査を行うためには、マシンビジョンアプリケーションでは4つのカメラが取得する画像を1台のPCで並列処理する必要がありましたが、HALCONの導入により、膨大なデータの並列処理が可能となり、1時間あたり数万という高速検査を実現しました。また、HALCONはタッチスクリーンでの操作が可能となっており、直感的に操作することができる点も大きな特徴となっています。

このようにして構築されたBBull社の高速マシンビジョンシステム「STRATEC BV 3000W」は、生産スピードの向上に加えて生産した製品の品質も保証されるため、高い評価を得ています。その結果、イギリスのCoca Cola社やPedigree社、アイルランドのDiageo-Baileys社、韓国のビール醸造企業・Hiteなど、ボトルの検査を必要としている世界各国の企業にて採用されています。

参照元:LINX 製品紹介サイト(https://linx.jp/casestudy/halcon-bbull/)

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