施主と請負契約を結ぶ元請の建設会社のもと、工事の種類に応じて複数の会社が施工を行う多重下請構造になっています。業者数が多いため業者間の連携が不十分になりやすく、設計変更に伴う工期の延長やコストの追加が発生します。
建設業は、「きつい」「汚い」「危険」の3Kのイメージがあり、若い世代の入職が進んでいません。そのため、1997年をピークに、建設業就業者は減少しています。55歳以上の就業者割合も高く、人手不足がさらに深刻化していくことも予想できます。
高所作業でのハーネス使用の義務化などの対策により、労働災害は減少傾向にはあるものの、死亡事故発生件数は業種別で最多となっています。2019年には269件の死亡事故が起きており、全産業の約3割を占めています。
日本国内の建設投資は、1992年度の84兆円をピークに減少傾向にあります。2010年度には、ピーク時の半分の42兆円にまで落ち込んでいます。今後も、人口減少などを背景に、減少していくと予想されています。
建設業界でIoTを導入する大きなメリットの1つに、労働災害などの危険を伴う作業を減らし、作業員の安全性の向上があげられます。
例えば、危険な場所の測量を機械に任せる、重機の自動化するなどです。他にも、作業員のヘルメットにセンサーを取り付けて温度や脈拍などをリアルタイムで知ることも可能です。
このように、上手く機械を作業に組み込むこと、リアルタイムに情報を収集することにより、ヒューマンエラーを未然に防ぎ、建設現場の安全性の向上が図れます。
人手不足の深刻な工事現場では、業務の効率化が求められます。
例えば、現場にカメラを設置し、遠隔でモニター監視が行えれば、現場監督者は1つの場所から複数の現場の管理ができるようになります。従来はすべての現場に赴いて現場管理を行っていましたが、IoTを導入すれば、対応が必要な場合にのみ赴くなど、業務を減らすことが期待できるでしょう。
また、業務の効率化は働き方改革にもつながり、労働時間の削減も見込めます。
IoTの導入により、遠隔操作が可能になると、作業員が現場に赴く必要がなくなります。そのため、必要最低限の人材で事業を行えるようになり、人件費はカットできるでしょう。
また、機材の稼働率の確認と分析も自動で行いデータを可視化できるため、原価管理が行いやすくなります。
つまち、人件費の削減と原価管理を簡単にすることにより、建設現場全体でのコスト削減が図れるというわけです。
IoTの導入により、従来、現場まで赴いて記録していた工事状況などのデータを、センサーを通して自動で収集することが可能になります。
作業員が目視する必要がなくなることで、作業員が現場へ向かう手間を省くことができます。また、ヒューマンエラーによる見落としなども減り、品質が向上することも見込めます。
2021年9月22日には、建築会社16社が、建設施工ロボット・IoT分野における技術連携に関するコンソーシアムを設立したと発表。
幹事社は鹿島建設、清水建設、竹中工務店。名称は「建設RXコンソーシアム」で、デジタル変革(DX)になぞらえ、ロボティクストランスフォーメーション(RX)という意味。
技術連携の対象となるのは、施工関連技術のうち、ロボット・IoTアプリなどに関する共同研究開発で、新規開発、改良、実用化、技術開発に伴う技術の実施許諾を含むとのこと。コンソーシアムで協働することで、技術開発のコスト削減とリスクの分散、開発期間の短縮を狙う。
鹿島建設、清水建設、竹中工務店以外の会員企業13社は以下の通り。
すでに日本の建設業界でもIoTの導入は始まっています。具体的にどのような形でIoTを導入しているのか、実際の建設現場のIoT活用事例については、こちらにまとめています。